ナード戦隊データマン

データサイエンスを用いて悪と戦うぞ

ダニング=クルーガー効果は数学的な性質でしかない

他人の研究を批判的に見ることはとても重要です。特に、その研究成果が一般的に広く認知されるものほど、固定観念が生まれてしまい、間違いを認識することが難しくなります。ここでは、ダニング=クルーガー効果が、ランダムな評価だけで生まれることを示します。

ダニング=クルーガー効果とは

ダニング=クルーガー効果は、実際の評価が低い人ほど、実際よりも高く自己評価する傾向です。単純化すれば、「実際の評価」と「自己評価 - 実際の評価」が負の相関を持つことを意味します。

わかりやすいバイアス

こういうバイアスを考えてみましょう。「人間は、自己評価するとき、中央付近にいると考える傾向がある」。このバイアスを考えると、以下の事象が生じます。

  1. 成績の低い人は自己評価が高い。
  2. 成績の高い人は自己評価が低い。

しかし、これは単に中央付近との差を意味するに過ぎません。言い換えれば、このバイアスからは、「成績の低い人は自信が高い」などと結論付けることはできません。つまり、この中央所属バイアスを持っている場合、別の人間行動を説明しているにもかかわらず、ダニング=クルーガー効果と同じ結果が得られることになります。

人間行動を無視して相関を示す

それでは、人間行動の傾向を全く無視した乱数によって、ダニング=クルーガー効果が現れることを示してみましょう。

前提:
1. 成績は一様に分布する。
2. 成績に対する自己評価は一様分布または正規分布である。
3. 自己評価から成績をひいた値を評価差分と呼ぶことにする。

仮説:
成績と評価差分は負の相関を持つ。
(成績が悪いほど自己評価は過大評価となる)
real_value <- runif(10000)
self_valued <- runif(10000)
diff_value <- self_valued - real_value
plot(real_value, diff_value)

f:id:mathgeekjp:20170911160842p:plain

real_value <- runif(10000)
self_valued_norm <- rnorm(10000, mean=0.5, sd=0.5)
diff_value_norm <- self_valued_norm - real_value
plot(real_value, diff_value_norm)

f:id:mathgeekjp:20170911160852p:plain

このように、人間行動を全く仮定せずに、乱数だけでダニング=クルーガー効果が発生することがわかりました。つまり、ダニング=クルーガー効果は人間行動の傾向ではなく、確率論的な性質である可能性があります。よりリアルな仮定で出力するには、以下のコードを実行します。

real_value <- round(runif(100) * 100)
self_valued <- round(rnorm(100, mean=60, sd=5))
plot(real_value, self_valued - real_value)
abline(lm(self_valued - real_value ~ real_value))

f:id:mathgeekjp:20170912004926p:plain

この仮定は、「自己評価を中心より少し高い値で見積もる」というものです。どちらにせよ、DK effectが全くの乱数から導き出されます。心理学とは無関係です。

茂木による「前提が間違った」記事

以下の記事では、「できない人ほど自信がある」という(おそらく)間違った前提によって議論しています。

blogos.com

もし、上記に述べたように、ダニング=クルーガー効果が単なる数学的な性質なのであれば、人間行動について何ら述べてはいないことになります。言い換えれば、「できない人ほど自信がある」なんていう行動傾向は存在していないということです。

研究を批判的に見るというのは、科学者や評論家などの権威の間違った主張から自己を防衛するようなものです。大々的に取り上げられるからと言って、それが正しいとは思わずに、批判的にみるべきです。

もちろん、このブログの記事も例外ではなく、「本当にそうなのか」ということを自分自身で検証し、考察することが重要です。どこかの脳科学者のように「有名な研究は正しい」などという態度は取らないように心がけたいものです。

参考

1.ダニング=クルーガー効果 - Wikipedia

www.ncbi.nlm.nih.gov